連載<テレワークの定着と労働時間管理の考察>③

トピック

③「緊急テレワークと通常のテレワークの違い」

 

2020年3月以降急増しているテレワークの定着と、そのカギとなる労働時間管理について考察しています。 4月に出された緊急事態宣言により、一時的にテレワークを行う企業が増えました。しかし、緊急事態宣言が明けると、テレワークを全体的に取りやめる企業や、出社を促す企業が増えました。   パーソル総合研究所の調査(パーソル総合研究所HP:「緊急事態宣言解除後のテレワークの実態について調査結果を発表」)でも、緊急事態宣言直後にテレワークが2.2ポイント減少する等の結果が出ています。

 

仕事に必要なICT関係その他の業務リソースが不十分、かつ、家の環境が整わない中での強制的なテレワークによって従業員の皆様に不満や困惑が広がりました。
一方、生産性が十分に上がらず、マネジメントがうまくいかないことに不安を覚える会社や管理職の皆様が多かったことは事実です。緊急事態宣言中は、弊所にもテレワークにまつわる悩みやお問い合わせが非常に多くありました。
 
こうした流れから、テレワークが完全に定着するかは不透明です。かつて、アメリカでもIBMやyahoo!などがテレワークを禁止し、出社を義務とするといった事例もあります。
 
しかし、新型コロナウイルスの影響は未来に向かって明らかではなく、また台風・地震といった災害、予期せぬ身内や自身の病気等、会社自体または従業員個人単位でも緊急にテレワークをせざる得ない状況は、今後必ずあると考えます。
 
その時に、また今回と同じようなことを繰り返すのではなく、会社もそして従業員個人でもしっかりと対応できるよう環境を整えておくことが大切です。

 

具体的には、テレワーク規程等で「緊急テレワーク」について規定しておきます。
・考え得る具体的な緊急事態な状況の記載
・会社から持ち出すことのできる機器・書類等
・テレワークで行うことのできる業務
・(テレワークを原則としたときに)出社することができる状況はどういうときか(原則、出社できないということの取り決め)
・緊急時の水道光熱費等の負担、手当等について等

 

緊急時には、テレワークが原則であるということを強く打ち出すことが大切です。
一方で、緊急テレワークのみで「テレワークはうちの会社には向かない」と考えてしまうのは早計です。
 
先の調査によると、69.4%がテレワークの継続を希望しています。緊急テレワークによって、「いままでテレワークできない」と考えていた企業もテレワークを実施しました。たとえば、介護や保育等の仕事でも、リモートデスクトップを活用するなどして、面談等をテレワークで行うことができました。
また、通勤時間が軽減された分、夫婦が協力して子育てや介護を行えるようになったり、家族で夕食を共にできたりするようにもなりました。単身赴任等の転勤移動を行わないでテレワーク体制を強化するという先進的な企業も出てきています。
 
もちろん、出社は原則行わないフルリモートワークの難易度は高いのは事実です。しかし、「通常テレワーク」として出社とテレワークを組み合わせることで、いままでよりもより働きやすく、育児や介護、病気等と仕事の両立が実現します。

 

私たちは、緊急事態宣言よりもっと前から、そうした「通常テレワーク」を取り入れた、さまざまな働き方を提案しています。
この緊急テレワークを契機に、ぜひ、テレワークを通常にも活用し、定着を目指していっていただけたらよいと考えます。

 
お気軽にお問い合わせ下さい。