連載<テレワークの定着と労働時間管理の考察>➁

トピック

➁「テレワークにフレックスタイム制度を導入する場合の留意点」

 

2020年3月以降急増しているテレワークの定着と、そのカギとなる労働時間管理について考察しています。 テレワーク導入からしばらくしてお問い合わせの多いのは、「いっそ、フレックスタイム制度にした方が勤怠管理は楽になるのではないか?」というものです。   フレックスタイム制度の導入によって、「仕事が詰まっている日は長めに仕事をし、余裕のある日は早めに切り上げることができる」「家族に用事のある日は、遅くスタートして遅く終えることで帳尻を合わせられる」等、メリットも多いです。   しかし、一方で自由度の高いフレックスタイム制の導入は「厚労省の平成 30 年就労条件総合調査の概況」によりますと、全体では5.6%の導入にとどまっており、また企業規模が小さくなるほど、導入率は減少しています。   《参考》厚生労働省HP:平成30年就労条件総合調査の概況   そこで第2回の今回は②「テレワークにフレックスタイム制度を導入する場合の留意点」をお伝えします

 

まず前提として、フレックスタイム制度を導入するには、就業規則や労使協定の整備が必要です。多くの会社では「フレックスタイム規程」等の別規程を作成します。
 
フレックスタイム制度(労働基準法第32条の3)は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が 日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。
《参考》厚生労働省HP: 「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」

 

よく「全て自由だったら、部下等の従業員とうまく連携できないのでは?」といったご質問を受けます。しかし、フレックスタイム制度といっても、「自由に設定できる時間の範囲や、コアタイム、休憩、休日等」について、それぞれの会社の必要性に応じてルールを設定できます。
 
確かに、テレワークを行うにあたってのフレックスタイム制の導入には、やはり少し向き不向きがあるように思います。
 
たとえば、次のような条件でフレックスタイム制を導入するところは多いでしょう。

清算期間:1カ月
1日の標準労働時間:8時間
月の所定労働日数:平日の日数(たとえば7月なら21日)
月の総労働時間:8時間×21日=168時間

 
この大枠の時間の中で業務コントロールがうまくできないと、知らないうちに残業が多くなってしまったり、逆に月の総労働時間が不足してしまったりします。また、休憩時間に中抜け時間を含めてもOKとした場合、深夜労働を禁止していても労働時間の帳尻を合わせるための夜10時~朝5時の深夜労働を暗に明に行ってしまう可能性もあります。

 

そこで、テレワーク定着に当たってフレックスタイム制を導入する場合には、工夫が必要です。
その一つが制度利用できる従業員を選別するというものです。
もちろん規程にしっかり記載します。具体例を挙げますと

・勤続年数で区切る(年数が多い方が1人で業務を回せる確率が高い)
・職位で区切る(職位の高い人の方が自律して仕事のできる可能性が高い)
・職種で区切る(専門性の高い職種、本人に仕事をゆだねた方が効率の良い職種との相性が良い)

 

また、一旦フレックスタイム制を認めても、制度そのものや利用する従業員の定期的な見直しは必要です。
 
成果が上がらなかったり、勤怠状況が不良であったりと、会社が客観的に判断できる時には、フレックスタイム制を当該従業員に当たっては中断するという判断もできると考えます。
 
こうした工夫は手間に感じるかもしれません。しかし、業務も労働時間も自律的にコントロールできる従業員は、これからの変化の時代に最も求められる人材像でもあります。
フレックスタイム制度の導入が人材育成につながったり、通常は短時間勤務しかできなかった魅力的な人材にフルタイムで働いてもらえたり、新たな人材の獲得に寄与したりする可能性もあります。

 

適切なルールのもと、テレワーク勤務とフレックスタイム制度の導入はお勧めできる組み合わせです。私たちも様々な具体的事案について人事制度構築でお手伝いさせていただいておりますので、制度導入のサポートが可能です。

 
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