なんでもQ&A~給食費について

Q&Aトピック

Q:質問内容

 

今度新しく保育園を開園します。 自園調理をしているため保育士をはじめ職員も、園児と同じく給食を食べてもらおうと考えています。 この給食について、何か注意点はありますか?

 

A:質問の回答

給与計算と関係して❶社会保険料との関係❷労働保険料との関係❸所得税との関係についてそれぞれ考える必要があります。

 

【❶社会保険料との関係】

給食を園で提供する場合には「食事で支払われる現物給与」ですので、現物を通貨に換算する必要があります。都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価額に換算して報酬として計算し、社会保険料を算定する際の基礎として算入する必要があります。
《参照:日本年金機構HP/全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)》:『令和3年4月から現物給与の価額が改正されます』ただし、職員が給食価格の 2/3 以上を負担する場合は報酬には含めません。

 

【❷労働保険料との関係】

労働保険料(雇用保険料・労災保険料)との関係では、次の全てに該当する場合には、福利厚生と扱うため、「賃金」として算入する必要はありません。

    • ① 給食によって賃金の減額を伴わないこと
    • ② 労働協約、就業規則等に定められて明確な労働条件の内容となっている場合でないこと
    ③ 給食による客観的評価額が社会通念上僅少なものと認められる場合であること

①~③に該当しない項目がある場合は、「通貨以外のもので支払われる賃金」とみなされ、地方の時価によって現物給与の価額が決まります。
しかし、職員から自己負担分について3分の1を超えて徴収する場合には「賃金」には当たりません。
《参照HP:厚生労働省HP》『現物給与制度の概要』

 

【❸所得税との関係】

園の給食は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。

(1) 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2) 次の金額が1か月当たり3,500円(消費税及び地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

この要件を満たしていなければ、給食の価額から職員自己負担の金額を控除した残額が給与として課税されます。
《参照HP:国税庁HP/タックスアンサー(よくある税の質問)/源泉所得額》『No.2594 食事を支給したとき』

 

【具体的考察A】

1食500円の給食を職員に提供し、職員が1食200円を負担して、月20食の場合
会社負担分300円×20日=6000円
職員自己負担分200円×20日=4000円

    • ❶社会保険料
    • 自己負担分は4000円÷6000円=3分の2なので、報酬に含めず
    • ❷労働保険料
    • 自己負担分が3分の1を超えているため、賃金に含めず
    • ❸所得税
    • 自己負担分は2分の1以上、かつ、6000円―4000円<3500円のため、所得税を徴収せず。
    • ❹給与計算
    雇用保険料、社会保険料、所得税はかかりませんので、控除項目で自己負担分を控除。

 

【具体的考察B】

1食300円の給食を職員に提供し、職員の負担額が0円で、月20食の場合
会社負担分300円×20日=6000円
職員自己負担分0円

    • ❶社会保険料
    • 自己負担分が0なので、地域ごとに表に基づき計算して、報酬に含めて社会保険料を決定する。
    • ❷労働保険料
    • 自己負担分は0であるが、給食による賃金の減額を行わず・給食の提供が労働条件ではなく・1食300円と価格も低いため、労働保険料の「賃金」には含めない。
    • ❸所得税
    • 自己負担分は0なので、300円×20食=6000円について所得税を課税する。
    • ❹給与計算
     雇用保険料は控除不要。

社会保険料、所得税は対象となるため、支給項目で賃金に換算した金額を「支給」したうえで、社会保険料・所得税を反映させ、控除項目で同額を控除。

なお、弊社代表執筆の「保育園の労務管理と処遇改善等加算・キャリアパスの実務」P42にも詳しく掲載しておりますので、ご活用ください。

ご不明な点等ございましたらお気軽にご相談下さい。