静岡県保育所において相次いで保育士が一斉退職するという事態が起きました。
3月28日の静岡放送のニュースで代表菊地が取材を受けました。
【保育士の一斉退職に関して】
忙しい経営者とのコミュニケーションが希薄で、最終的な判断をしてくれる人が不在。
そのような状況の中で不適切保育の問題や保育事故のニュースに直面しながら、「自分たちの責任感だけでは子どもも自分も守れない」という思いに至り、
これまでサービス残業だろうが休憩なしの環境だろうが「こどものために」と彼らの中にある職業倫理の中で頑張ってきた保育士たちが次々と現場を去ろうとしています。
そんなブラックな職場は保育士が去って当たり前だ、
自分たちは保育者を駒のように扱ったりはしていない、保育者のことをよく考えている、
そう思う経営者も多いと思いますが、この一斉退職のリスクはそうした非情な経営者の元でのみ起こる問題ではないようにも見えます。
それが昨今の「園改革」の影響です。
深刻な少子化の影響を受けて「選ばれる園になるために」が合言葉のようになっており、今までのままでは良くないと大きな改革に着手する園が増えていますが、この改革の進め方が急激であったり現場の声を無視した進め方をしてしまうと職員は抵抗を感じてしまいます。
報道された園では保育方針を大きく変えて英語やプログラミングといった教育を取り入れたことも要因として挙げていました。
これだけを見るとあたかも早期教育に問題があったという主張のようにも思われてしまいますが、決してそれが原因ではなく、
「現場に方針の意図が伝わらなかった」という点が大きいのではないでしょうか。
つまり、たとえ事業者が園児や職員のためにと思って行った改革であっても現場の職員に伝わらないというコミュニケーションの問題が生じると、変化に対する負荷が高まり、「この職場にいる意味」を見出せずに転職の決断に至ってしまったり、これまでの園運営や職場環境の課題と共に職員が一致団結して抵抗する=一斉退職するということにつながりかねないのです。
職員のためを思って取り組んだ働き方改革ですら、丁寧に目的を説明せずに「単に残業しない」「業務効率化」ということばかりを強調してしまうと、「自分たちがこんなにも真剣に保育のことを考えているのにぞんざいに扱われている」という気持ちになってしまうこともあるでしょう。
何の改善の方法も示さないまま残業制限だけを指示してしまうことは限られた時間で多くの業務負荷をかけることとなり、隠れ残業や持ち帰り仕事にもつながります。
この対応はパワハラにおける「過大な要求」にも該当します。
「保育士は駒に過ぎない」という暴言だけではない、無意識のうちに怒っているハラスメントの存在にも気づかなければなりません。