なんでもQ&A~住宅手当と借上げ社宅どちらがお得?

Q&Aお知らせトピック

 

Q:質問内容

当園では住宅手当の制度があり、 単身者については1ヶ月2万円の住宅手当を支給しています。 今回、地方から雇い入れすることになり、 会社が家賃8万円の賃貸物件を契約し借上げ社宅を検討しています。 1)8万円の住宅は職員個人で借りて、会社は住宅手当として2万円支給する場合と、 2)住宅手当を支給せず、会社が借上げ社宅を借り家賃から2万円を引いた残りの額6万円を給与から天引きする場合では、 社会保険料や雇用保険料、所得税で何か違いがあるのでしょうか。

 

1.職員個人が住宅を借りて、会社は住宅手当のみを支給する場合

❶雇用保険
労働保険では、住宅手当は労働の対償となる賃金に該当しますので、雇用保険料が住宅手当分増加します。
❷社会保険
社会保険では、住宅手当は労働の対償となる報酬に該当しますので、報酬月額に含まれ住宅手当がない場合より通常は社会保険料が増加します。
❸所得税
住宅手当も給与所得になりますので住宅手当分、所得税が増加します。
❹給与計算
手当として給与で支給します

 

2.会社が借上げ社宅を借り住宅手当との差額分のみ家賃を天引きする場合

❶雇用保険
雇用保険では、現物給与について代金を徴収するものは、
原則として賃金とはなりませんが、従業員の負担額が家賃の3分の1を下回っている場合は、
家賃の3分の1に相当する額と従業員負担額の差額部分は、現物給与として雇用保険料がかかります。
家賃の3分の1を上回る代金を従業員が負担する場合は、現物給与とはなりません。
参照:厚生労働省HP雇用保険事務手続きの手引き 第6章 賃金について
今回の件では、8万円の家賃に対して6万円を自己負担しているため、雇用保険料は据え置きです。
❷社会保険
社会保険では、借り上げ社宅は現物給与を受けたとみなされます。
住宅の場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。
参照:日本年金機構HP年金の制度・手続き「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」
東京都の場合 畳1畳あたり2830円(2021年度価格)
居住スペース6畳の場合 2830円×6畳=16980円
・上記住宅を従業員に無償で貸与する場合には、16,980円を現物給与として標準報酬月額に上乗せされます。
・従業員が16,980円以上の家賃を負担している場合、現物給与とみなされないため、社会保険料はかかりません。
・従業員が10,000円の家賃を負担している場合は、差額の6,980円が現物給与となります。
今回の件では、従業員負担6万円>16,980円以上ですので、社会保険料は増加しません。
❸所得税
従業員から1か月当たり一定額の家賃(以下「賃貸料相当額」といいます。)以上を受け取っていれば給与として課税されません。
賃貸料相当額とは、次の(1)~(3)の合計額をいいます。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
・従業員に無償で貸与する場合には、この賃貸料相当額が給与として課税されます。
・従業員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が、給与として課税されます。
しかし、従業員から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
参照:国税庁HPNO2579使用人社宅や寮などを貸したとき
今回の件では、6万円÷8万円=0.75 すなわち75%自己負担しており、50%以上ですので所得税は増加しません。
❹給与計算
従業員負担額を給与計算時に控除します。
賃金支払いに関する労使協定(労基法24条)に記載が必要です。

 

質問の場合には住宅手当を支払うよりも、 手当相当額を控除した金額を直接本人から給与天引きする方がよいように思えます。 特に雇用保険料、社会保険料については、会社負担分も増額となりません。 ただし、1)の制度を運用していて、2)に切り替える場合には賃金規程等の改定が必要となりますので、ご注意ください。 また、社会保険料が減額となるということは、将来受け取る年金額の減少や病気やけがをした場合に受け取る傷病手当金、妊娠時に受け取る出産手当金の額の減少にもつながりますので、この点にも注意が必要です。 なお、借り上げ社宅制度を社内の福利厚生として、求人の際のアピールポイントに繋がる可能性もあります。 しかし、賃貸物件の契約手続きや更新料、急に退職し空き物件となった場合の家賃発生、解約時の違約金など、様々な費用が発生する可能性もありますので、社内でよくご検討の上、制度の導入をしてください。

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