緊急テレワークと労働時間管理の具体的な留意点

トピック

新型コロナウィルスの影響で、2020年3月2日より公立小中高のほとんどが少なくとも2週間休校となります。一方で、時差出勤やテレワーク制度が整っていない会社においても、テレワークが推奨されています。 弊所では、2016年度に神奈川県テレワーク推進事業において専門家派遣に携わったことを皮切りに、多くのご企業様のテレワーク導入を支援しており、テレワークについては多くの実務事例を抱えています。 そこで、今回は臨時にテレワークを行う場合について、厚労省の「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」を基礎にしつつ、具体的な労働時間管理のコツをお伝えいたします。 厚労省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」

【会社側の準備】

❶最低限、時間管理方法を決めてください
昨今は勤怠管理システムが充実していますので、システム導入の場合には会社同様に始業・終業時間の打刻を徹底ください。まだ未導入の場合でも、「業務開始時間」「業務終了時間」は必ず、メールでもよいので上司に報告するようにします。
そのうえで、以下どちらかを選択します。
A)テレワーク(在宅)勤務にみなし労働時間制を適用する。
B)テレワーク(在宅)勤務であっても、詳細に時間管理する。

A)テレワーク(在宅)勤務にみなし労働時間制を適用するとは
業務開始時間および業務終了時間に、所定労働時間+休憩時間の開きがあっても、休憩を適時取り入れつつ従業員の自己管理のもと業務を行い、多くの場合「所定労働時間(たとえば、1日8時間や7時間45分等)は業務をしたものとみなす」という、労基法(38条の2)に定める「事業場外のみなし労働時間制」を適用する場合です。

ただし、この場合において「労働時間を算定し難い」という要件において厚労省が定める3要件のすべてを満たす必要があります。具体的には、
1.テレワークが自宅で行われること
2.テレワーク中に、上司等会社の指示により「常時接続可能な状態となっていない」こと
※上司から予め決められていないチャットやメール、webMTGの指示等が来ても即時に対応しなくてもよいことが認められている状態です。
3.随時、会社(上司)の具体的な指示に基づいてテレワークが行われていないこと。
※ほぼすべての業務が上司の指示を仰がないとできない、細かく時間管理されている、といった状態でないことを指します。大枠の業務(業務の目的、目標、ある程度余裕のある期限等)が決められていることについては問題ありません。

イメージとしては、役職者や技術職の業務等、細かな業務指示がなくても自分で仕事を進められ、成果から業務時間を類推できるような方が向いています。

B)テレワーク(在宅)勤務であっても、詳細に時間管理する
原則はこちらとなります。ただし、小中高が休校となったことから、子どもがいつつテレワークを行う従業員も多くいる可能性があります。そのため、「通常の所定労働時間は業務に費やせない」「午前・昼・夕方等に大きく休憩を取りたい」といったニーズが出る可能性があります。

その場合において、会社側は「半休を認める」「時間短縮勤務を認める」「複数回の中抜け時間を認める」「始業・終業時間のずらしを認める」といった事前の約束を取り決めておく必要があります。

そのうえで、中抜けについては、メールでもよいので「中抜け開始時間~中抜け終了時間」を複数回きちんと報告させるようにしてください。勤怠システムを導入されていない場合でも、当日の勤怠備考欄に記載したり、別にエクセル等で管理したりして、勤怠の締め時点できちんと労働時間が計算できるようにしておく必要があります。

❷勤怠管理の注意点

テレワークの労働時間管理に事業場外のみなしを取り入れたり、複数回の中抜け時間を取り入れたりすると、起こりがちなのが、午後10時~翌朝5時の深夜時間帯に業務をしてしまう、という状況です。いくら、「会社は深夜時間の業務を認めていない」といっても、メールやチャット、PC作業で時間の履歴があれば、会社は黙示の指示を出したということになる可能性は高く、労働時間に参入する必要があり、安全配慮義務もあります。

そのため、「絶対に深夜時間帯は業務を行わない」ことや、認める場合には深夜業務をどの程度認めるのかというところを、きちんと取り決めておく必要があります。

少しずつの時間をとることで、連続勤務し法定休日をとらずに働いてしまうというパターンも同様にみられます。このあたりは業務委託契約とは異なるため、会社の管理をお願いします。

【従業員の準備】

労働時間に関する心構え
上記、A)事業場外のみなし、B)通常の労働時間管理、いずれの方法をとったとしても、自律して労働時間管理をすることが大切です。「業務開始・終了の連絡が漏れた」「(通常の時間管理で)中抜け時間の報告が漏れた」というのでは、会社が安全配慮義務を果たせなくなり、また労災等が仮にあった場合にも業務時間であったか否かがわからなくなってしまいます。

在宅での労働時間確保の工夫
もし、小学生や中学生の子どもが在宅しつつのテレワークの場合には、一層の工夫が必要です。
・業務遂行場所を決める(リビング→子ども、子ども部屋→自分等、しっかりと業務する場所を確保する)
・夫も妻もテレワークの場合には、休憩時間をずらしてとることで、双方の労働時間を確保する。
・子どもの友だちを呼んで、自宅で遊ばせておく(テレワークする人同士がわかっていたら、預け合いも検討する)
・勉強や読書、動画視聴タイムと、●時に休憩して確認する等の約束事を決める(こまめに中抜けはした方がよい)
等、予めの準備によって労働時間の確保や集中度が変わります。確かにテレワークをすることで評価が下がるということはありませんが、やはり職務である以上、「しっかりと指揮命令通りの仕事ができる」「成果を出すことができる」ということは求められます。そのことを念頭に、工夫いただければ幸いです。

この緊急のテレワークの機会を、チャンスととらえ、仕事とライフの両立、多様な働き方の浸透に労使ともに尽力いただけましたら幸いです。

 
また、テレワークについてお問い合わせがありましたら、お気軽にご連絡ください。