保育園と時短勤務者の制度設計

トピック保育園、保育士

かつては妊娠・出産を契機に残念ながら退職をされてしまう保育士も多かったのですが、近年、育児介護休業法の充実等により、育児休業明けに復帰をされる方も増えてきました。保育士不足の現状をふまえると、とても貴重な機会ですが、正社員の短時間勤務での復帰について、これまでご経験のない園も多いかと存じます。 そこで、法律の定めを含めて、保育士の時短制度復帰についてご説明いたします。

 

【前提:保育園の特殊性と正社員保育士の条件】

①保育士の労務管理については、保育園の主として以下のような特殊性をしっかり把握する必要があります。

・多くの保育園では1日に11時間程度は開所(7時30分~18時30分等)している。
→1日8時間勤務の保育士だけでは、全ての時間をカバーできない。早番・遅番等のシフト体制が必要となる。
・通常は土曜日も開所している。
→週40H勤務とすると、週2日休みとするシフト体制が必要となる。
・法定配置人数を満たす必要がある。(たとえば0歳児3人につき、1人の保育士が必要等)
→法定配置人数を満たすために、早番・遅番の確保が絶対条件となる。
・認可保育園の常勤保育士は週5日×30H、月120H以上等、時間数の下限が決められている。(※企業主導型保育の場合は、常勤1.0カウントは160H)
→ある程度まとまった時間を働ける人材を確保する必要がある。

② ①の特殊性をふまえた「正社員保育士」の条件とは?

実は、「正社員保育士とは〇〇だ」という法律上の明確な定義はありません。しかし、①のような特殊性があるために、多くの保育園では以下のような保育士を正社員保育士としています。
・週の所定労働時間は40時間(1カ月変形労働時間制や、シフトの週休2日制を導入するところが多い)
・早番・遅番ができること
・土曜日出勤ができること

【短時間勤務と法律の関係】

一方で、育児休業を取得し、復帰する保育士の中にはフルタイム復帰ではなく、短時間での復帰を希望する方も多いです。また、最近では介護のために短時間勤務を希望する方も出てきました。これらの短時間勤務については、以下のような法律上の義務があります。

育児短時間勤務 子どもが3歳に達する日まで(誕生日の前日)の従業員が希望した場合には、原則として1日の労働時間を6時間勤務とする短時間勤務制度を設け、短時間勤務をさせなければならない。
介護短時間勤務 要介護状態にある対象家族を介護する従業員が希望した場合には、利用開始日から連続する3年の間で2回以上の利用を可能とする制度を設け、短時間勤務をさせなければならない。

※入社1年未満の従業員、週2日以下勤務の従業員は、労使協定を定めることにより除外可能。
★時短勤務者の賃金
通常は、正社員(フルタイム)時の時間案分とします。
8Hではなく6H勤務となった場合には、原則として賃金は正社員(フルタイム)時の8分の6で計算します。賞与も同様です。
★育児休業後に時短勤務で復帰した場合にはフルタイムと比較して賃金が低下するのが通常のため、社会保険料は育休に伴う月額変更により下がります。しかし養育特例により、年金額は休業前の標準報酬で計算されるのは従業員にとってのメリットです。※育児休業のみの措置であり、介護休業には適用がありません。
★育児や介護を理由とする短時間勤務を希望した従業員を含めて、妊娠・出産・育児・介護等を理由に従業員を不利益に取り扱うことは違法となります。(男女雇用機会均等法/育児介護休業法)

具体的には、解雇や雇止め、正社員からパートタイム労働者等への変更を強要、従業員の希望を上回る短縮等の措置、減給、賞与算定や人事考課で不利益に取り扱う等です。

【正社員保育士と短時間勤務の関係】

以上のような保育園の特殊性と法律が定める短時間勤務との兼ね合いですが、正社員保育士が復帰する場合には、しっかりと「どういうルールで短時間勤務が適用されるのか」を制度化しておかないとトラブルのもととなります。
「早番・遅番ができない常勤保育士は想定できない」というこれまでの常識と、育児や介護との両立のための時短勤務が増えてきた現状のギャップはこれからしっかり詰めていく必要があります。保育園における短時間勤務のルール作りを、弊社では各事情所様の実情に応じてしっかりサポートしております。

詳しくは、こちらまで。お問い合わせをお待ちしております。