2026年1月にForbesで紹介された米国の最新調査(Catalyst)によると、女性が多く離職している実態があるという記事がありました。離職の主因は「ケア責任(育児・介護)の増大」と「職場の柔軟性の欠如」にあるとのことです。以前より米国では、高学歴な女性たちが子どもの教育環境を最優先し、苦渋の決断としてキャリアを離れる「オプトアウト(誠実な離職)」という現象があります。
実は私の知人でもそうした選択をする友人・知人はいて、たとえば公共インフラ企業の理系専門職でキャリアをしっかり積んで、経験も十分。本来なら会社の大小を問わず、幹部クラスになってもおかしくない人が、子が小1になるのを機に退職を選択しました。
キャリアブランクが長かった私にとっては正直、社会的損失とさえ思ってしまいました。
一方で、成人を迎えた子を持つ身としては、「こども真ん中」で子どもに寄り添う育児による「愛着形成」が子にとっていかに重要かということも身に染みています。子どもが「困ったときに助けてもらえる」「自分の気持ちを受け止めてもらえる」という安心感を得ることは、単なる甘やかしではなく、一生の土台となる「生きる力」に直結すると考えるからです。
今回は、時期的にも「小1の壁」に焦点を当て、「こども真ん中」を考えながら就業継続を模索するにはどうしたらよいか?を考えてみました。
1. 「小1の壁」とは?
日本の統計(日本女子大学等)でも、子どもが小学校に上がるタイミングで母親の就労率が 約10%低下 するというデータがあります。保育園時代は何とか乗り切れても、学童の終了時間の早まりや「宿題の伴走」といった家庭負担の急増により、多くの女性が「これ以上は無理だ」と「子が小1になる、またはなってから」離職を選択する現象を「小1の壁」といいます。
米国に限らず、日本でも優秀な人材ほど「責任を全うできない」という誠実さから自ら身を引く「オプトアウト」を選んでしまう傾向は、あります。私見ですが、優秀な人材ほど「自分の親にしっかりと心身をサポートしてもらい、愛情をもって育てられた」割合が多く、「自分も自分の親のように子を育てたい」と考える傾向が強い気がします。
2. 「こどもを真ん中に」据えた解決策
この壁を崩す鍵は、子どもを孤立させない環境づくりにあります。
宿題のチェックや心のケアが必要な放課後時間に合わせ、小学校低学年であっても短時間就業が継続できる制度の活用や、柔軟に勤務時間を調整できる「中抜け」、可能ならリモートワークの徹底活用が離職防止に役立ちます。
「子どもが学校に馴染めるか」という親の不安に寄り添い、短期間のキャリアの「踊り場」を組織として容認する姿勢が、長期的な定着に繋がります。「子ども」とひとくくりにするのは「こども真ん中」の姿勢ではありません。たとえば、今急増している不登校の問題も、短い期間で解消できる子からそうでない子まで様々です。会社でもそうした個人的な事情に寄り添いながら、柔軟な報酬体系と就業継続メニューを作ることができると、離職防止に多大に貢献すると考えます。
3. 父親の主体的なかかわりが必要
女性の離職加速の背景には、依然として女性に偏るケア(育児・家事・介護など)の負担があります。裏を返すと、父親の主体的なかかわりの不足があり、ここに女性の就業継続のカギがあると考えます。もちろん、シングル家庭もありますので父親だけの協力というわけではありませんし、祖父母の協力が得られればその方がより充実はしますが、今回は一般的に「父親」についてお伝えします。
父親の主体的な関わり:
父親にも「小1の壁」を自分事として捉え、子の事情により遅刻・早退・欠勤をせざる得ない状況が生じたときに、父母で分担できる体制を整えることを”常識”としてください。子どもに対して父親の存在意義と安心感を高めますし、母親の雇用側だけが負担を強いられるという不満を逃すこともできます。
多様な価値観への接触 :
父親が学校行事に参加したり、一緒に宿題を見たりすることは、子どもが「多様なロールモデル」に触れる貴重な機会となります 。
生きる力の土台 :
「困ったときに(父親にも)助けてもらえる」という安心感を通じて築かれる愛着形成は、子どもの一生の土台となる「生きる力」に直結します 。
4. 会社に問われる「寛容性」
会社側に求められるのは、性別を問わず「育児という尊い仕事」を抱える職員を等しく支える覚悟です 。次のようなことを具体的に検討するとよいです。
- 具体的な生活シミュレーション : 小学校入学を控えた社員と、入学後の生活の変化についてこまめな対話を行うこと 。
- 柔軟な制度設計 : 父親の「中抜け」やリモート活用を促進し、それを職場で共有・歓迎する空気感を作ること 。なお、その負担を被るのが管理職や若手になりがちです。会社としてはこのような負担の軽減策も同時に求められます。
- 「パパの壁」の共有 : 男性が家庭の事情を相談できる、女性と同じ熱量で、相談環境を整えること 。
5 . キャリアを途切れさせないために
冒頭のアメリカの記事では、雇用の柔軟性の欠如が「女性の才能の流出」を招くと警鐘を鳴らしています。小1の壁は、親子、そして夫婦が次のステップへ進むための出来事だととらえて、できるだけ前向きに立ち向かっていたいただければと思います。
人手不足の現在、大切な人材を失う前に、まずは職場で、そして家族で、「新しい両立の形」について仕組みを作り話し合ってみませんか 。親がチームとなって子どもを支え、組織がそのチームを支える。この循環ができて初めて、女性は「退職」せずに、細々だったとしてもキャリアを継続させることができます。




