統括MGRコラム#7「フルフレックス×中抜け」は柔軟な働き方にとって特効薬になる?自由の裏側にある「規律」と「不公平感」の処方箋
「もっと柔軟に働けたら育児や介護と両立できて、仕事も効率的にできるのに」
多くの時間的な制約があるホワイトカラー社員が抱くこの願いに、フルフレックスや中抜け制度は有効な答えです。人手不足の現在、時間的な制約がある優秀な人材のモチベーションを維持し、離職を防ぐ強力な武器にもなります。
しかし、全体最適を考える経営層にとって「自由すぎるサボるのではないか?」「仕事がうまく回らないのではないか?」という懸念がいつもつきまといます。単に社員に「自由に働いていいよ」と制度を渡すだけでは、組織に不公平感が溜まり、生産性が低下するリスクすらあります。「短い時間でも柔軟に働くことで生産性が上がる」という目標のために、必要な「3つの核心」を、実務の現場から紐解きます。
1. 「特定の人の特権」にしない:全社員対象の制度導入
制度を限定的に運用すると「育児や介護をしていない自分たちだけが損をしている」という不満が、制約のない社員から上がります。これを放置すると、ギスギスした組織になり、かえって生産性も下がる可能性があります。
不満が生じる最大の原因は、制度が「特定の属性の人だけが使える免罪符」に見えてしまうことにあります。
- 「こども関連の用事」
- 「役所や銀行への用事」
- 「自己研鑽のセミナー参加」
- 「通院」
- 「リフレッシュのための散歩」
業務に支障がない限り、これらを等しく認める運用にしないと公平といえません。独身の若手も、ベテランも「自分も必要ならいつでも使える」という安心感が不公平感を解消する第一歩です。
2. 「見えない不安」を解消する:スケジュールの徹底した可視化
中抜けを積極的に運用すると「あの人が今、何をしているか、いつ戻るのかわからない」という不透明さが、周囲の疑心暗鬼を生みます。これを防ぐには、スケジュールを公開して「透明性」を確保することが不可欠です。
グループウェアの予定表に「中抜け時間」を明記し、誰でも見られる状態を徹底すること。「緊急ならチャットに出られるか」「いつ戻るのか」というステータスが明確であれば、周囲は計画的に業務を進めることができ、ストレスが大幅に軽減されます。
また、理由さえあればノールールで「中抜け時間」を活用できるという運用を行わないというのも手です。月の回数制限や、〇時間以上ならば有給休暇を活用する等、「中抜け」の制度自体を狭くするというのも公平性を担保します。
3. 結果を正しく評価することへの転換
自由を与えることは、決して「甘やかす」ことではありません。むしろ、これまで以上に「社員としての高い自己管理能力」を求めることになります。
また評価すべき結果については業務ごとに丁寧に設定します。郵便対応や電話対応など「隙間を埋める安定的な貢献」もまた、重要な成果の一つです。成果の定義を明確にし、ルールを守る人にこそ自由な運用が認められるという文化を醸成していきましょう。
フルフレックスや中抜け制度は、導入すれば自動的に組織が良くなる魔法ではありません。むしろ、従来よりも高いレベルの自律的な組織運用が求められる、難易度の高い仕組みです。
「社員として結果を出すために、自分に最適な時間を選択する」
という誇りを持った社員であると会社も信頼できるとき、この制度は組織の持続可能性を支え、会社にとっても本人にとっても有益となります。
■ フルフレックス制度とは?
一般的なフレックスタイム制にある「コアタイム(必ず勤務すべき時間)」が一切ない仕組み。日ごとの始業・終業時間を社員が自由に決められ、月などの清算期間内での調整が可能です。
■ 中抜け(なかぬけ)とは?
就業時間の途中で、私的な用事のために一時的に業務を離れること。一斉休憩とは異なり、中抜け時間は労働時間に含まない運用が一般的です。フルフレックスと組み合わせることで、法的にスムーズな柔軟運用が可能になります。
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