社会保険労務士法人ワーク・イノベーション、統括MGRの糠谷栄子です。
弊社の顧問先様は保育業界を中心に、介護・病院などの「人がいないと成り立たない業務」「営業時間の長い業務」というエッセンシャルワークが多く含まれる業界が多いです。
保育・医療・介護の現場は、常に「命」や「生活」に直結する緊張感があり、現場を支える職員の皆様の献身には頭が下がる思いです。一方で、これらの業界は女性比率が高く、育児や介護による制約を現実的に受ける人の多い職場であり、とくに正社員としての「時短勤務」をいかに円滑に運用するかが、組織の定着率を左右します。
時短勤務の「壁」を乗り越える視点
前提としてエッセンシャルワーカーが多く働く現場では、24時間や長時間、土日祝休みではない営業時間という共通点があり、そのすべての時間帯を埋めるためにシフト制で運用しているという特徴があります。加えて、それぞれの業界には特有のハードルがありますが、解決の糸口は「トップ(上長)のマネジメント」「時短勤務の細分化(ルール化)」「業務と報酬の公平性」の3つにあると考えています。
時短勤務を軌道に乗せるための3つのステップ
- 「トップ(上長)のマネジメント」
福祉業界によくあるのですが「年長者が残っているので帰りづらい」「労働時間外での “研修” “勉強会”が頻繁にある」「より良いものを作るために残業(という労働時間かどうかも不明瞭)は必然」といった心理的な壁の存在です。こうした壁があると、そもそも「長い時間職場にいること」がよしとされるため、「時短勤務=悪」となりがちで、なかなか前に進めません。まずはトップ(上長)が繰り返しそうした業務の在り方を改善したり、改善することをプラスに評価することで時短勤務に対する土壌をつくります。「早く帰っていいよ」という言葉だけでなく、トップ自らが「短時間で成果を出す働き方」を肯定し、チーム全体の心理的安全性を確保することが重要です。 - 時短勤務の「細分化(ルール化)」
時短勤務を一律で考えると、制約のない人に負荷がかかりすぎたり、その結果退職者が増えてしまったりします。時短勤務を過剰な配慮や属人的な制度(言ったもん勝ち)としないためには、どういう条件の時短勤務ができるのかというと制度化し、それを運用する必要があります。たとえば「早番・遅番を含むのか?」「どのような担当の仕事になるのか」「役職者が時短勤務をする場合の職務内容は何なのか?」いくつかのパターンを作り、それ以外はできないといった線引きをしっかり作ることが大切です。 - 業務と報酬の公平性の確保
エッセンシャルワークの多くは賃金が年功序列型です。しかし、それでは負担の増える若手職員が疲弊してしまいかねません。すべてとはいきませんが、なるべく負担のかかる部分に報酬が払われるような仕組みを取り入れることが大切です。また、時短勤務がもし正職員の時短勤務以下の業務内容になるならば、追加的に制度を構築する必要もあるでしょう。福祉の業界では人事評価というのは嫌われがちですが、勤務成績やシフトの柔軟性という観点を評価した賞与の分配という所に目を向ける必要があると考えています。
人手不足が常態化しているエッセンシャルワークの職場環境では、時短勤務の戦力化は避けて通れない課題です。多様な働き方を受け入れられる組織は、結果として採用力も高まり、安定した経営に寄与する部分が少なからずあります。
まずは小さな改善から始めてみませんか。具体的な制度設計や運用のルール作りでお悩みの際は、ぜひ私たちにご相談ください。




