社会保険労務士法人ワーク・イノベーション、統括MGRの糠谷栄子です。
今回は「短時間正社員制度」の普及を阻む壁と、
それでも多様な働き方の一環として導入を勧める理由についてお伝えします。
なぜ「短時間正社員制度」は2割にとどまるのか?
先月、NHKのクローズアップ現代の特集でも、短時間正社員制度の導入は進んでいないという話がありました。
令和7年度版「労働経済の分析」によると、短時間正社員制度の導入企業は約2割。
育児時短勤務が「当然の権利」として定着した一方で、
より柔軟な「短時間正社員」への移行が進まない背景には、現場の切実な疲弊があります。
多くの働く現場から、
「育児時短者のフォローだけで現場は限界。
これ以上、短い時間の社員が増えたら業務が回らない」
という本音が漏れます。
この「不公平感」と「業務過多」こそが、
短時間正社員制度の導入を阻む最大の心理的・物理的な壁だと考えています。
メリット・デメリットの再整理
短時間正社員制度を導入・運用する上での整理をしてみます。
- メリット:
優秀な人材の離職防止(特に、ワーク・ライフ・バランスを重視する若手の定着)、
多様な働き方を推進することでの採用ブランディングの強化、
多様な視点による生産性向上(の期待)など。 - デメリット:
業務配分の複雑化、フルタイム社員への負担集中、
短時間正社員を人事評価することによる士気低下など。
特に育児時短勤務は
「子が3歳まで」「(令和7年10月からは選択によって)子が6歳まで」
といった期限があるのに対し、
短時間正社員は「恒久的」な働き方になり得ます。
だからこそ、現場は
「いつまでフルタイム社員の負担が続くのか」
という不安を抱きやすいのです。
それでも短時間正社員制度導入が「公平感」を生む可能性を探る
デメリットを解消し、短時間正社員制度を成功させることが、
労働力不足を補い、安定的な就労継続につながる可能性は高いと考えています。
手前みそで恐縮ですが、弊社はフルタイム正社員の1日所定労働時間が7時間で、
6時間の短時間正社員制度を導入しています。
すると、育児時短勤務の社員と短時間正社員との差がなくなるため、
負担感がある意味でフラットとなり、
他の制度(フルフレックス・リモートワーク・中抜けなど)も相まって、
8時間正社員では継続して働けない優秀層の獲得および雇用継続に寄与しています。
鍵は「1人あたりの生産性の劇的向上」と
「負担が大きく、カバーする側への還元」にあります。
- 生産性の向上:
企画書作成、議事録、メール対応などの定型業務をAIが肩代わりすることで、
短時間勤務でも売上利益に貢献する「成果」を出せる可能性が高まります。
また現場業務であっても、作業マニュアルの即時検索、
音声入力による日報自動作成、AIによる熟練技能の継承などにより、
物理的な拘束時間を減らしつつ、現場の質の維持が期待できます。 - 負担をカバーする側への還元:
フォローに回るフルタイム社員に対しては、
時短や省力化によって浮いたコストを手当や賞与として還元することができると考えます。
また、「負担」を計測するという視点で、
人事評価制度を改定してもよいでしょう。
マネージャーとして、社労士としての考察
私は、短時間正社員制度を単なる
「福利厚生」「多様な働き方のパフォーマンス」ではなく、
「持続可能な組織を作るための経営戦略」と捉えています。
一時の揺り戻しとして、労働時間・接触時間の長さへの尊重は確かにありますが、
時間の長さだけで評価する時代は終わっています。
AIや技術革新を下敷きにして、
個々の事情に寄り添いながらも時間短縮に取り組み、
組織として最強のパフォーマンスを発揮する。
そんな人事制度の設計が、今、求められています。
まずは貴社の業務の中で、
「短時間正社員」であっても活躍できる仕事がどれくらいあるのか、
業務の棚卸しを一緒に始めてみませんか?




